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理事長ブログ

父の入院

2020-02-10
父が入院しました。
 
母は7年前に他界しました。
 
妹2人はそれぞれの地で
家庭を持ち暮らしています。
 
病院の事情もあり
多くの時間を病院内で過ごしている今、
人生の終焉について考えることが多くなりました。
 
当院では緩和ケア病棟を運営しており
つい最近まで担当医として
患者さんの話を聞き、
ケアをして看取りを行ってきました。
 
人間はどんなに長生きしても
その寿命は100歳前後と言われています。
 
平均寿命はここ30年で
10歳以上伸びているのに
ギネス記録の最高齢の方の年齢は
それほど変化はありません。
 
日本人の死因の第1位は
「癌」であるのは周知の事実ですが
ここ30年の間に2人に1人が癌に罹り、
3人に1人が癌で亡くなっています。
 
それは同時期に見られる現象です。
 
つまり人は長生き出来る時
癌が発動しその寿命を終えさせると思われます。
 
よって、若くして発動する癌は
撲滅しなければなりませんが
寿命近くに起こる癌は老化の一部と考え
逆に治療の名のもと、
すればするほど衰え弱り苦しみ
その治療期間は人生の最後に
理想とする時間になったとは
言えないのではないか、と僕は感じています。
 
人によっては緩和ケア病棟は
「医療を諦めた」と言われますが
緩和ケア病棟に入院し
痛みやだるさから解放され
安らぎと安眠、
美味しく感じることのできる食事
穏やかな便通など
本来のその人の
時間を取り戻す多くの患者さんを診て
緩和ケアは立派な治療であると
確信しています。
 
人間は死なない動物ではありません。
その運命が避けられないのなら
最も理想的な終末に導かれるよう
専門的知識に基づく医療と看護、
リハビリ、栄養管理などのもとに
穏やかな時間を家族と共に過ごすことが
理想の終焉としみじみ感じるように
なっている最近の私です。
 
62歳になった私も
人生の終焉の入り口に立ったことは
もう間違いありません。
自分の姿を患者さんの姿にだぶらせることは
申し訳ないのですが
私たちの理念、
「自分が受けたい医療を目指します」を
まさに実践している当院の緩和ケア病棟です。
 
父ももう退院して毎日をゆったり過ごしています。
 
昔はカッとなると額に青筋立てて怒鳴っていた父の姿が
今では懐かしく思えて
穏やかにほほ笑む父より
そっちの父の方が父らしいと思ってしまう
自分はまだまだ父を怖がっている息子なんだなと
思う62歳の僕でした(笑)
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